イタリアでは2022年10月に発表されたこの小説は、主人公である悩み多きイタリア人作家とその周囲の人々の2015年から今日にいたるまでの紆余曲折を描いた作品です。それは一見、非常にパーソナルな物語のようでありながら、実は、誰もが大小さまざまな災禍の「サバイバー(生存者、生き残り)」であるこの奇妙な時代を生きるわたしたちの物語でもあります。
ジョルダーノはこの作品を書くために原爆被爆者を取材し、2022年夏には広島と長崎の原爆慰霊祭にも参列しました。事実、原爆の悲劇と今も続く核兵器の脅威が主要テーマのひとつとなっており、そういう意味では日本人にとって特別な縁のある作品と言えます。
パオロ・ジョルダーノの小説『タスマニア』、どうぞよろしくお願いいたします。